こんにちは、発毛専門医です。
AGA治療薬の成分としても有名な「デュタステリド」が、今月あたらしくジェネリック医薬品として国内発売されました。(参考:フィナステリドとデュタステリドの違い)
さらに、「オーソライズド・ジェネリック医薬品(AG)」も発売され、ニュースとなっています。
この記事では、「デュタステリドのジェネリック医薬品」と「オーソライズド・ジェネリック医薬品(AG薬)」について詳しく解説します。
ジェネリック医薬品は、一言で言うと、先発品と効果効能・有効成分が同じ医薬品のことです。
参考記事「ジェネリック医薬品が正規品に比べて安い理由。あなたはジェネリック薬を選びますか?」もあわせてお読みください。
目次
オーソライズド・ジェネリック(AG)とは
まず「オーソライズド・ジェネリック医薬品(AG)」について解説します。聞き慣れない言葉ですよね。
「オーソライズド・ジェネリック医薬品(AG)」とは、先発品を開発したメーカーが品質を認めたジェネリック医薬品であり、開発会社のお墨付きがあることから、「お墨付きジェネリック」ともいわれます。
普通のジェネリック医薬品と差別化するために作られたのだと思います。薬局では略して、AG(Authorized Generic)と呼ばれるので、この記事でもAGと呼びます。
オーソライズド・ジェネリック(AG)と通常のジェネリック医薬品の違い
欧米ではなじみのある医薬品のタイプで、最近になって日本にもはいてきました。開発メーカーの先発品が売れなくなり、導入されたのがきっかけでしょう。
それでは、AGと通常のジェネリック医薬品の違いはなんでしょうか?
通常のジェネリックと違う点は、先発の製薬メーカーから許可を得て作られたジェネリック医薬品ということです。
比較表を見ていただくとわかりやすいと思います。左がAG、右が一般的なジェネリック医薬品です。AGは原薬・添加物・形状・色・味・製剤の安定性・製造方法が先発品と同じであることが多いです。

薬によって異なります(図は大日本住友製薬HPより)
オーソライズド・ジェネリック(AG)のメリットとデメリット
それでは、AGのメリットとデメリットをみていきましょう。
AGのメリット
- 先発医薬品とほぼ同一薬
- 添加物に違いによる薬のききめや副作用への心配少ない(添加物によって作用や副作用が違うことは理論上ありえます)
- 安定供給可能(メーカーの主張)
一般的に、ジェネリック医薬品は、開発費用や広告宣伝費がかかっていないため、有効成分が同じでも安いです。

AGのデメリット
- 飲みにくい錠剤がある
(ジェネリック医薬品によっては、パッケージの工夫や錠剤の工夫がされて、先発品より飲みやすいものも多くある) - 認可されている薬が少ない(デュタステリドでは16種類もあるのに、武田テバファーマのみ)
- 価格が先発品に近くジェネリック医薬品のメリットがない
デュタステリドのジェネリック医薬品とAG薬を解説
デュタステリドも、「通常のジェネリック医薬品」と「AG薬」の両方が登場しています。
先発品「アボルブ」のジェネリック医薬品である
「デュタステリド」は、前立腺肥大症薬は「アボルブ®」と呼ばれ、AGA治療薬は「ザガーロ®」と呼ばれています。今回発売されたのは、「アボルブ」のジェネリック医薬品になります。

歴史をみてみると、約10年前の2009年にアボルブが日本で初めて治療薬として認可されています。
ザガーロが認可されたのが、2015年であることを考えると、ザガーロのジェネリック医薬品が国内で発売されるのは、5年後でしょうか。はたまた、直近には発売されるのでは?という噂もありますので、分かり次第お伝え致します。
先発品「ザガーロ」のジェネリック医薬品が国内発売開始
(2020年10月13日追記)
東和薬品からザガーロのジェネリック医薬品が国内で発売開始となりました。先発品であるザガーロと同じく、0.5mgカプセルと0.1mgカプセルが発売されます。写真の図は、0.5mgカプセルのジェネリックザガーロです。

デュタステリドジェネリックの製薬メーカーリスト
それではどういった種類のデュタステリドがあるのでしょうか。みてみましょう。
2020年7月現在、下記16種類のデュタステリドのジェネリック医薬品が存在します!すごい数ですよね。これすべてジェネリック医薬品です。
ちなみに、緑色の背景で太字になっている「武田テバ」がAGです。

デュタステリドのジェネリック医薬品は大きく3種類
上記の表をみていただけるとわかると思いますが、デュタステリドのジェネリック医薬品は大きく3つに分けられます。
- (赤色)先発品と異なる錠剤の(カプセルではない)ジェネリック医薬品
- (緑色)先発品とほぼ同一のジェネリック医薬品(AG)
- (黄色)先発品と有効成分も錠剤の形も同じのその他ジェネリック医薬品
医療の現場では、こういった錠剤の違いなども含めて処方することになります。
このようにジェネリック医薬品では、飲みやすいような加工をされて発売されることもあり、ジェネリック医薬品の価格以外のメリットでもあります。
AG薬と普通のジェネリック医薬品のどっちがいいか?
残念ながら、ひとえにどれが良いかをお伝えすることができません。共通しているのは、効果効能と有効成分は同じという点です。
その上で、錠剤の形状に違いがあったり、色や製造方法に違いがあったりします。
デュタステリドの例でお伝えすると、カプセルの先発品よりも、錠剤のほうが飲みやすいという方がいるのも事実です。
ポイントとしては、ご自身の治療歴であったり、どういった薬を飲んできたかであったり、などが大事になってくるため、薬剤師さんなどの医療従事者に相談することが大切です。
(参考1)AGA治療にアボルブとして処方されるのか?ザガーロの違いとは?
クリニックによっては、アボルブをAGA治療薬として処方することがあります。
表を見てもらえるとわかりますが、ザガーロとアボルブの大きな違いは、有効成分です。ザガーロには、0.1mgの形状があります。

(参考2)他のオーソライズド・ジェネリックAG例
種類は少ないですが、身近なAG薬を2つ紹介します。
アレルギー薬のフェキソフェナジン(アレグラ®)
アレグラ®は、薬局で見かけた方もいるのではないでしょうか。
アレグラ®の有効成分は、「フェキソフェナジン」であり、現在(2020年現在)は特許が切れたためたくさんのジェネリック医薬品があります(10種類以上あるのではないでしょうか笑)。
歴史をさかのぼると、2000年にこの薬ははじめて日本ではじめて発売されました。2012年、当時はアレグラ®をつくっていたサノフィがはじめてAG薬として、他社が製造することを認めました。当時は、画期的なジェネリック医薬品でした。現在でも、フェキソフェナジン「SANIK」という名前で、処方され続けています。
余談ですが、薬局でみかけるアレグラ®は、サノフィが久光製薬と協力して、アレグラ®というブランドのままで、薬局などで販売しています。

余談:高血圧薬のバルサルタン(ディオバン®)って覚えてますか?
「ディオバン®」にもAG薬があります。
名前きいたことありませんか?そう、ディオバン事件の、ディオバンです。医師主導臨床研究に悪名高い歴史を残しました。論文の捏造とか、ありえません。
「しつこくジェネリック医薬品まで売ってる場合かよ!!!」
と、ノバルティスさんには怒りたくもなります。製造は、ノバルティスの子会社「サンド」です。
このディオバン事件に関わった関係者には、本当に反省していただきたいです。僕たちもこの事件を忘れてはいけません。
(詳しくは、Wikipediaを御覧ください)
まとめ
さて、いかがでしたでしょうか。デュタステリドのジェネリック医薬品について、気になっている方の参考となれば幸いです。
個人的には、ジェネリック医薬品は、使い方次第という立場です。
費用も抑えながら、効果や副作用もかわらない治療もできます。一方で、先発品ではないという不安もあるかと思います。
ご自身の治療で心配なことがありましたら、お近くの薬局やクリニックの専門家に聞いてみると丁寧に教えてもらえると思います。
それでは!